新型コロナウイルス感染症の拡大が引き金となり、リモートワークが広がっています。そのメリットを活かして、地方への移住など住む場所を自由に選ぶ人もいて、新しいライフスタイルが広がりつつあります。
一方で、リモートワークの副作用も明らかになりつつあります。
健康的な働き方を実現するために有効なリモートワークですが、過度な会議やフルリモートワークは “やり過ぎ “であることを解説しています。
著者紹介 志村 哲義(精神科医、心療内科医、睡眠医学、産業医
東京医科大学精神医学教室非常勤講師。株式会社こどもみらい研究開発部長。睡眠、メンタルヘルス、企業の生産性・ストレス対策に関する研究の第一人者。
産学連携で企業の「儲かる健康経営」「睡眠改善プログラム」を実施し、複数の学校で退学率90%減、コールセンターで離職率74.5%減など、さまざまな成果を上げている。
そのノウハウをもとに、本人が気づいていないストレス「隠れストレス負債」を発見・改善するアプリケーション「ANBAI」(ダムスコ社提供)の監修も行っている。
体内時計を狂わせる「フルリモート
ワーク・ライフ・バランスとDUMSCOが行った調査によると、1日4回のオンラインミーティングを境に高ストレス者が増加することが判明しました。1日平均3回の会議を行う人の14%が高ストレス者、1日平均4回の会議を行う人の38%が高ストレス者という結果が出ています。
私が籍を置く東京医科大学の研究によると、リモートワークの存在自体がストレスを軽減する一方で、フルリモートワークは生産性を低下させることが分かっています。
コロナの前後でリモートワークの頻度を調査したところ、リモートワークの頻度が増えると、特にフルリモートになると、睡眠リズムが乱れ、夜型になる傾向があることがわかりました。
その原因は、生活環境にあります。人は午前と午後に十分な光を浴びることで体内時計を調節していますが、リモートワーカーは家から出ないことが多いので、出勤のために朝日を浴びない傾向があるのだそうです。リモートワークの場合、仕事中に太陽を見ることができなくなりがちです。
このように日中の太陽光が不足し、夜遅くまでパソコンに向かう傾向があると、体内時計が狂い、睡眠に影響を及ぼすことがあります。
体内時計を整えるためには、毎日同じ時間に食事をすることが望ましいのですが、リモートワーカーでも不規則になってしまうことがあります。食事も睡眠を調整するために必要な要素です。このように体内時計が乱れて睡眠が浅くなると、体調不良や生産性の低下につながることが分かっています。